僅か2巻で完結する傑作漫画、こうの史代著『さんさん録』をご紹介する。
さんさんとは、亡き妻が生前に参平(さんぺい)を呼ぶ時の呼び方。
さんさん録とは、亡き妻が残した生活の知恵的なメモ集大成の、さんさんに関する部分の名称。。
参平は妻を亡くした後、息子家族(息子、嫁、娘)と同居を始めるが、そこで亡き妻が残したメモ集大成を見つける。
そのメモ集には、妻が参平のために残した知恵がたくさん書かれていた。参平はその知恵を活用し、息子家族との生活を豊かなものにしていく。
本作品では、父と息子、義父と嫁、祖父と孫、高齢男性と妙齢女性との関係性が描かれる。
そして、高齢男性の老後の生き方のひとつのモデルケースが提示されている…と言えば、少々大袈裟か。
作者、こうの史代の卓抜した構成力・筆致力が光ってる作品。
こうの史代(Wikipedia こうの史代の頁を開く)は、映画やドラマにもなった『この世界の片隅で』の著者。
『理屈コネ太郎』の印象では、本作品は1話完結様式を踏みながら、徐々に物語内の時間が経過してストーリーが展開いく構成。これは『この世界の…』でも見られるので、著者の得意な手法なのかも。
同じく2巻完結の傑作漫画、たかみち著『百万畳ラビリンス』(当サイト内当該頁を開く)とは異なる基本的に1話完結の漫画。
決まっている最終地点に向けて全ての要素が渦巻きの底の一点を目指して流れる『百万畳ラビリンス』とは趣を異にしている。
作者が違うから当たり前か…。
僅か2巻が”全て”の良質な作品に出逢える時代と場所に生まれて幸せである。
日本にはいったいどれだけの数の優れた漫画家が居るのか。つくづく不思議である。
ところで、本作の優しさが少し温いと感じたら、真鍋昌平著『闇金ウシジマくん』がバランサーとしてお奨めしたい。ただ、毒の量がハンパないけど。(本サイト内の当該頁を開く)